自分自身との深層対話力を磨く エンパワーメントを生み出すのは「小さな気づき」の数
By 岩田洋治
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エンパワーメント

そもそもエンパワーメントとは
エンパワーメントとは誰かにパワーを与えることではありません。また誰かからパワーをもらうことでもありません。自らが自分の中に眠っている力を呼び覚ますことを言います。
もちろん他者のエンパワーメントを願い、サポートすることはできます。しかし、それはあくまで呼び水としての役割であって、やはり最後は本人が自分自身の伸びしろ(課題)に気づき、それに意識的に取り組むことで、エンパワーしていくのです。
私たちはこれまで、あまり自分自身の内面を見つめることはしてきませんでした。そもそもどのように自分と向かい合えばいいのかがわからなかったということもあるでしょう。あるいは、与えられたタスクを指示通りに実行するには必要がなかったからなのかもしれません。
しかし、先の見えない中で道を切り拓いていかなければならないこれからの時代では、自分の内面との深層対話を抜きに結果を生み出していくことはできません。それが、最近エンパワーメントが注目されている理由でしょう。
エンパワーメントが必要となる時
エンパワーメントが必要となるのは、例えば次のような場合です。
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- 自分を変えたい、変わらなければならないと思う時
- 自分の持っている可能性を見出し、発揮したいと思う時
- 答えの見えない問いに向かい合っている時
- 言葉にならない、モヤモヤしたものを抱えている時
- 他者のエンパワーメントを願う時
- 多様な人たちと共創し、チームで結果を生み出していく時
- 人生の意味を深く問う時
一言で言うならば変容する時(変容期)を迎えているということ。チョウが羽化する前のサナギの期間のようなものです。これまでうまくいっていたことがいかなくなり、動いていたものが動かなくなり、なんとなくやる気がなくなり、もやもやすることが多くなる…。
そのような時は、「何が間違ってこんなことになったのか」と考えるよりも、「一体何が問われているのか」と、その意味を問う方がいいでしょう。
このコラムでは、そのようなエンパワーメントがどのようにすれば実現できるのかを考えていきます。
【参考コラム】エンパワーメントとは”眠っている力を呼び覚ます”こと
エンパワーメントを高めるにはより深い理解が必要
エンパワーメントは一体どのようにして実現するのでしょうか。
その問いに答えるには、私たちの内面で一体何が起こっているのかを考えてみる必要があります。エンパワーメントとは眠っている力を呼び覚ますこと。つまり、私たち誰もが力を持っており、また、その力を発揮できずにいる。このことをよく理解することから始めていかなければなりません。
なぜなら、普通に生活している中で、あまりそのようなことは考えないからです。毎日が自分をエンパワーできる選択肢で満ちていると感じている方は少ないでしょう。もっと言うと、そうであるのに、私たちはその選択肢を日々選んでいないと意識している人は更に限られるでしょう。私たちは、多かれ少なかれ、無意識に生きているからです。
「大変」とは「大きく変わる」こと
実は、そのような勿体無い状態に気付いて、自分自身と向き合おうとするのは、物事がうまくいっている時ではありません。一見すると問題とも言える状況において初めて、私たちはこれまでと違う形で自分と向き合おうとします。例えば人間関係や、経済、健康の問題を抱えた時。困難に向かい合った時。先が見えない時。このままではやっていけないと思う時。何かモヤモヤしたものを抱えている時。よくわからないけれど気持ちが落ちている時などです。
75年間にわたる発達心理学における研究では、人が変わるには次のような条件が必要であることが報告されています。
- 何らかの挫折、ジレンマ、人生の謎、苦境、私的な問題などに悩まされ続けること
- 自分にとって大切な局面で、その限界を思い知らされる経験をすること
- 適度な支援を受けることにより、葛藤に押しつぶされず、しかし葛藤から逃れたり、その重圧をやわらげたりもできない状況に身を置くこと
【参考資料】「なぜ人と組織は変われないのか」
この研究からも分かるように、一見するとネガティブな状況の中に、実は私たちが変わっていける可能性が存在しているのです。「大変」とは呼んで字のごとく「大きく変わる」時のこと。大変な状況が教えてくれるのは、これまでの自分の力では乗り越えていけないということであり、それを乗り越えるための力を自分の中から呼び覚ます必要があるということなのです。
もっと力をつけなければならない。よく私たちはそのように言いますが、エンパワーメントの世界観では少し違った感じとなります。むしろ、何が自分の力を阻害しているのかを見つけること、これがエンパワーメントの本質です。
【参考コラム】元型
自分自身との深層対話力をつける
私たちは自分自身に対して二つのことを知りません。一体自分の中にどれほどの力が眠っているかということ。そしてその力が自分の中でどれほど阻害されているかということ。つまり、自分自身について、私たちは何も分かっていないのです!そのような理解に立ったときに、エンパワーメントの意味が見えてくると思います。
自分のことは自分が一番知っていると言いますが、その知っているはあくまで自分の表層のこと。自分の内面で何が起こっているのかを知るためには、私たちは自らとの深層対話をしていく必要があります。
エンパワーメントを実現するためには学びが必要になりますが、学ぶべきことは自分の外側ではなく、自分の内側にあります。深層対話を通して自分自身に気づくこと。その小さな気づきの数が、エンパワーメントを生み出していきます。
エンパワーメントを高めるには、自分自身のより深い理解が必要なのです。
エンパワーメントを高めて得れる効果・効能とは
効果・効能と聞くと、「なんだか温泉の話みたいだな」思う方も多いでしょうが、ここではあえてこの言葉を使ってみましょう。エンパワーメントにはこういうこともあるのかといった気持ちで読んでいただければと思います。
個人のエンパワーメントの効果・効能は:
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- 気持ちが楽になる
- 自分を肯定できるようになる
- 毎日が楽しくなってくる
- 人間関係が好転する
- いろんな発想が出てくるようになる
- 選択や判断が早くなる
- 体が良く動くようになる
エンパワーメントが進んでいく中で、まず何よりよく聞く言葉が最初の3つです。自分の内面を見つめ、どのように自分自身の力の発揮が妨げられているかに気づくことで、気持ちに変化が生まれるからです。
ただ、エンパワーメントの効果・効能は外から見えない形だけではありません。後半の4つは外から見て分かる変化です。
エンパワーメントによって人間関係が好転するのは、自分自身が相手との向き合い方を見つめ直すからです。相手と向き合っている時の自分はどのような状態になっているのかに気づくことで、不思議と相手の反応が変わってくるケースはよくあります。
選択肢が見えてくる
後半の3つは、エンパワーメントによって自分自身のエネルギーレベルが上がってくると、自然と起こり始めます。新しいことを始めるには、体の中にエネルギーが充満している必要があります。日々の仕事に追われている状態では、とてもそんな余裕はないでしょう。また、そのような状態を変えていこうとするエネルギーすらも生まれて来ません。自分自身がエンパワーすることで、いろんな選択肢があることが見えてきますし、それを選んで行動するだけの力も生まれてきます。
私たちの中には、そのような可能性が眠っているのです。まずはゆっくりと一歩を踏み出すところから。少し慣れてきたら、軽く走り出すように。エンパワーメントを体で実感してほしいと思います。
チームのエンパワーメントの効果・効能は:
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- 一人ひとりが自ら考え、判断し、自律的に動けるようになる
- それぞれが思っていることを言葉にできるようになる
- チームをエンパワーできるリーダーシップが育まれる
- いろんなアイデアが生まれ、化学反応が起こる
- 問題の本質を見つける力がつく
- 困難な状況に強くなる
- 変化への適応力が高くなる
エンパワーメントの効果・効能をさらに実感できるのが、チームのパフォーマンスを通してです。ただ、チームのエンパワーメントとは言うものの、やはり個人のエンパワーメントが基本となります。お互いエンパワーしたもの同士がチームワークを発揮するときに、これまでにないチームの変容を遂げることができるのです。
会議を見ればエンパワーメントが見える
組織のありようを表す一つの指標は、会議の空気感です。全体的な空気はどんな感じでしょうか。意見やアイデアは活発に出るでしょうか。参加する人たちは本当に思っていることを言えてるでしょうか。いつも決まった人が話をしていないでしょうか。いつも決まった人が物事を決めていないでしょうか。
また、意見が対立したときに、チームの力が分かります。対立が分断を生むのか、それとも化学反応が起こって新しいアイデアを生み出せるのか。
問題の本質が早く見つかるのも、エンパワーしたチームの特徴です。問題を隠そうとしないオープンな空気の中で、誰かを、何かを責めることなく、問題の本質を特定し皆でそれに取り組むことができます。エンパワーしたチームは変化への対応が早く、困難な状況の中で道を切り拓いていく力を発揮します。
エンパワーメントを理解して高めるなら、行動科学研究所へ
エンパワーメントの本質とは
意識が変わり、行動が変わり、結果が変わる。これがエンパワーメントのプロセスです。その鍵となるのは、一人ひとりの意識の変容です。もし、意識の変容という言葉が少し難しそうに思えるならば、小さな気づきの数と言い換えてもいいでしょう。
自分自身との深層対話を通して、自分自身に気づくこと。これがエンパワーメントの本質です。
行動科学研究所では、個人や組織のエンパワーメントをサポートするための9つのプログラムを用意しております。エンパワーメントに興味を持ち、取り組んでみたいと思われる方は、次の3つのプログラムのいずれかから始められてはいかがでしょうか。
1. エンパワーメントベーシックコース
まずはエンパワーメントを学んでみたいという方は、オンライン開催されているこの講座がいいでしょう。
2. リーダーシップラボ
いい仕事がしたい。仕事を通してエンパワーしたい。エンパワーしたチームを実現したいという方には、リーダーシップラボがおすすめです。
3. PEP個人セッション
自分自身の力を発揮して、もっとクリエイティブに生きたいのであれば、時間をかけて深層対話に取り組んでいく個人セッションがおすすめです。