テロス

コラム

テロス

人生の目的を読み解く 「万物は自ら固有の目的を持っている」

By 岩田洋治

テロス

「テロス」という言葉は、あまり馴染みがないかもしれません。
しかし、その語源は古く、紀元前にまでさかのぼります。

古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、万物は自ら固有の目的を志向して運動していると考え、その目的の事をテロスと呼びました。

このことが、現代に生きている私たちにとってなぜ大切なのか、いったいどのような意味を持つのか、そのことを考えていきましょう。

まず、「万物は自ら固有の目的を志向して運動している」とはどういうことでしょうか。

例えば、手に持った石を離すとします。もちろん石は地面に落ちます。
当たり前と思えるようなこの現象を、アリストテレスは、それは石が地面に帰るというテロス(目的)を持っているからだと説明しました。

地面からやってきた石は、地面に帰るテロスを持つ──そのように考えたのです。

火は上に向かって燃え上がります。
なぜならば、天上に帰ろうとするからです。
プロメテウスによって天上から盗まれた火は、天上へと帰るテロスを持っているのです。

このように、万物は自ら固有の目的を持って、その目的にかなうように運動しているとアリストテレスは考えたのです。

 

自分の人生のテロスを読み解く

 

 

もちろん現代において、石や炎の運動についてこのように考える人はいません。

しかしながら、アリストテレスの考えがいまだ私たちにとって直感的説得力を持つのは、例えば次のような場合です。

「俺の人生(命)だ、好きなように生きて何が悪い?」

私たちは自分の命を、または人生を、それぞれが勝手に思い描いたように生きることができると思っています。
しかし、そうではないのです。

人生には人生のテロスがあり、命にも命のテロスがある。
それは、恣意的に私たちがどうこうできるものではない。
私たちにできるのは、そのテロスに耳を傾けて、テロスを読み解き、テロスを生きることなのです。

あたかも全ての答えを自分勝手に決められるように考えて生きるのではなく、答えは「向こう側」にあって、こちらから問いかけていくべきものだと意識すること、

これがテロスに内包されている意味です。

例えば起業して会社を立ち上げたとしましょう。
そこには創業のビジョンがあり、理念があるでしょう。
しかし、それより深いところで、会社には会社のテロスがあるのです。

私の会社とか、あなたの会社ということではなく、会社のテロスというものがある。

「それは一体なんだろうか?」と問い続けていくこと、自分自身を「テロスから問われている位置」に置くこと、その時に拓けてくる世界がある。

それを大切にしていくことです。

結婚のテロスとは?
教育のテロスとは?
家族のテロスとは?
仕事のテロスとは?
‥‥

あなたにとって大切となるテロスを、深めてみてください。

岩田洋治

この記事を書いたのは:岩田洋治

1964年生まれ
1987年 北海道大学工学部卒
1989年 同大学修士課程修了
      同年外資系メーカーに入社
      国内および海外にて研究開発者として勤務
1998年 同社を退社、行動科学研究所に加わる
2019年 行動科学研究所所長に就任

PEP個人セッション、リーダーシップラボ、PEP企業研修などを通して、個人や組織のエンパワーメントをサポート。

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